22Oct
デイサービス等、介護の送迎業務において、具体的にどのようなヒヤリハットが発生しているか? その影響範囲はどこまで及ぶか? 対策をどのように打っていけばよいか?
具体的なサンプルをもとに、紐解いていきます。
送迎車には、日々積んだり降ろしたりする持ち込み備品が多数あります。
- 懐中電灯
- 携帯電話
- 傘、雨合羽
- 足台
- 体温計(新型コロナ対応用)
- 消毒液、除菌シート、マスク(新型コロナ対応用)
- 殺虫剤
これら、備品の持ち込み忘れや、不具合が発生したとき、業務にどのような影響がでてくるか? 見ていきましょう。
帰りの送迎時、お客におりてもらう際、家によってはとても暗い場所があるので、懐中電灯を使って安全に降車してもらうようにしましょう。
ルームランプがオフになっていたため お客様降車時に 足下が暗く危険だった。 また懐中電灯を持参した方が良いと思った。
帰りの送迎の時車内に懐中電灯が無く、お客様を車から降ろし玄関まで送り届けるのに危険を感じました。
バネットに置いてある懐中電灯があまり明るくないので足元がみえずらい。
帰りの送迎では、遅くなると日が落ちて暗くなることがあります。特に、冬場は、完全に日が落ちて真っ暗な状況の中、寒さで手足の動きが悪くなる悪状況下で、転倒リスクが高まります。
住宅街では街灯が暗いところもあり、足元を照らす懐中電灯は必須ですが、積み忘れはよく報告されます。ライトを忘れたからといって取りに引き返すことは無いので、添乗介助のスタッフは、送迎車から利用者宅までの移動介助の際、暗い中でのイレギュラーな対応をせざるを得ません。危険ですし、事故発生時の責任問題にもなり得るでしょう。
懐中電灯の電池切れもよくある定番パターンですね。利用時に気がついてもこれまた手遅れなので、出発前の段階でチェックする習慣を作っておきたいところです。電池切れ間際は徐々に暗くなっていきますので、早めに電池交換を行ったほうが望ましいでしょう。
手に持つタイプの懐中電灯は片手が塞がるので、施設によっては、両手が自由にできるヘッドライトタイプや首に掛けるタイプのライトを導入しているところもあります。
ハイエース送迎車の携帯電話をセンターに忘れたまま出発をしてしまいセンターからの連絡が滞りました。
●●様宅に到着して連絡を入れようとしたら携帯電話の電池が切れてしまい、インターフォンを鳴らすも気づいて頂けなかった。
帰りの送迎時、携帯電話が他の車と入れ替わっていた。
送迎用の携帯電話が朝の迎えの後で紛失してたため、その車に乗車されていたお客様に了承を得、カバンの中を確認したところ、●●さまのカバンから発見された。
当日の送迎計画、結構コロコロ変更になりますよね? 送迎予定の利用者から体調不良での休み連絡が直前に来たり、送迎車が渋滞に巻き込まれてて身動きがとれなくなったり、利用者宅で時間を取られて次の利用者宅への訪問時間が大幅に遅れる見通しになったり。
センターとの連絡を取るための携帯電話にトラブルが発生すると、円滑な送迎業務に大きな支障をきたします。
送迎車に電話を持ち込むのを忘れるパターンについては、乗車前のチェック習慣で予防が可能です。
電池切れについては、定期的に充電を行うための業務の流れをいかに作るかですね。センター側に携帯電話専用の整頓箱を作って、それぞれの送迎車からちゃんと戻されているかどうか、戻された端末に充電ケーブルが刺さっているかどうか、一目瞭然に見渡せるようにするやり方もあります。とっさの電池切れへの応急対応としては、送迎車にUSB充電アダプタと充電ケーブルを用意して、車内で充電できるようにしておくのも良いかもしれません。
携帯電話は施設単位で同じ機種を一括導入することが多いので、パッと見で見分けがつかないことも良くあります。シールなどで、どの送迎車に対応する端末か、はっきり見分けがつくようにしておきましょう。
●●様宅で、雨が降っており、送迎車に傘が無かったため、娘様にお借りした。
帰りの送迎時、車にあった傘を挿すと傘の先の一部分のカバーが外れむき出しになっていた。
送迎時、雨降りで傘を車内に持っていったが、車椅子のお客様用にバスタオルを積まなかったので、今後、ひとりハイエースで車椅子で傘がさせない時等、意識してバスタオルを持参する。
送迎車内の座面の下(足下)に傘が横に置かれており、そのままお客様が乗車したら、傘を踏んでバランスを崩し転倒する恐れがあった。
送迎時に3号車の助手席のシートを電動で下げる時に傘を巻き込んでしまった。すぐに気付き止めたが、傘の骨が折れてしまった。操作をする時は充分に注意するようにします。
2号車、カッパが置いてなくて、雨が激しく両手引きのお客様でぬれてしまう所でしたが、家族様が後ろから傘をさしてくれたので助かりました。
朝、ハイエースに前の日に使用した汚れたらバスタオルとタオルが座席に置きっぱなしになっており、傘も濡れたまま畳んだ状態で入っていた。また、タオル類も空っぽになっていた。
雨の日の送迎には傘が必須ですが、雨の日にしか出番が無いため、意外と忘れがちです。特に最近はゲリラ豪雨などの局所的な降雨も増えてきているので、出発時に雨が降っていなかったからと油断すると、出先でずぶ濡れになって後悔するかもしれません。
原則として傘は車に常備しておくものですが、濡れた傘を乾かしてから収納するタイミングで、車に戻すのを忘れがちです。かといって、濡れた傘をそのまま畳んで車内に放置するのは、カビが生えて不衛生なので絶対にやめましょう。
車内のどこに傘を置いておくか? 無造作に座席足元に置いておくと、利用者が躓いて車内で転倒するリスクが大きく、実際にそういうヒヤリハット報告が数多く上がって来ているので注意が必要です。利用者の導線を遮らない位置を確認した上で、置き場所を固定するようにすると良いでしょう。置き場所を定めておけば、乗せ忘れにすぐ気がつくことができますし、夕方送迎の暗い中で傘を求めて車内を探し回ることも無くせます。
また、傘のほかにも、雨合羽やバスタオルなど、現場の状況に応じて臨機応変に対応できるワンセットがあると便利です。利用者の身体を濡らさないように、濡れたままにしないようにするのは当然の大前提ですが、送迎ドライバーや添乗員も快適に送迎業務を行うためにはどのような装備が必要か、施設内で検討してみて下さい。例えば、雪が多く降る地域と、強風注意の地域と、坂道が多い地域とで、それぞれ最適解が異なるはずですよね。
朝の送迎時、手消毒液と体温計を持って出るの忘れてしまい、一度センターに戻りました。少々到着時間を押してしまいました。
7号車の車内の消毒液のボトルが壊れていて、使用できなかった。早急に補充をお願いしたいと思います。
朝のお迎えの添乗をしていた際、体温計を胸ポケットに入れていた。ハイエースのリフトを下ろして●●様にご乗車していただいていた際、何かが落ちた音がした。周りを見渡しても何も落ちていなかったが、音がしたことは間違いなかったので、リフトの下をのぞき込むと体温計が落ちていた。●●様のシートベルトを装着する時にかがんだ際に、胸ポケットから落ちてしまったと思われる。
朝の送迎で、お客様の体温を計るのに、体温計が電池切れ間近だったようでエラーになってしまい検温できませんでした。
新型コロナウイルスの対応で、送迎車乗車前の検温&手消毒は必須になったご時世です。
新しい追加業務で、まだ運用が熟れていない現場が多いと思いますので、運用の仕組み上の不具合が無いか、重点的にチェックして、運用改善のサイクルを回していくのが大事になるでしょう。
普段持ち歩く体温計は、あくまでも身体の表面の温度を測る簡易計測なので、誤差が出やすい計測はしないように注意が必要です。冬場だと、厚着している利用者の測定結果が高めに出やすいです。夏場だと、外に出て待っていた利用者の体温が一時的に上がっていて測定結果が高めに出やすいです。いずれも、体調不良による発熱とは別の要因で一時的に体温が上がっているだけなので、混同しないような配慮が難しいところですね。実際の現場運用だと、厚着している方にはアウターを脱いで頂いてから計測しているところも見受けられます。
●●様宅にお迎え時蚊が沢山おりリフトだった為後ろから蚊が沢山入りお客様が刺されました。今後は虫除けスプレーを持参したほうがいいかと思われます。
●●様のお宅にお送りに行っているあいだにハイエースに蚊が入ってきてしまい、また●●様が蚊に指さされてしまった。虫除けスプレーが必要かと思われます。
車の中に虫がたくさんいて気が散って運転が危い。
蚊などの害虫対策は、意外と重要です。送迎車内の環境を不快にするのはもちろんですが、各種病気の媒介リスクもありますし、蚊に刺された痒みが原因で利用者の足がふらついたり、送迎ドライバーの集中力が損なわれたりもします。
どのようにすれば事故を防げるでしょうか?
- 送迎車輌の備品一覧を、リストにまとめましょう
- それぞれの器具について、動作不具合を起こすか、想定してみましょう
- 実際に動作不具合が起きたら、最悪どのような被害が出るか、イメージしてみましょう
- 動作不具合が起きた時の、手動でのリカバリー体制を検討しましょう
- 各備品が漏れなく搭載されているか、送迎車の出発前か、または、前日夜にチェックする体制を作りましょう
- 各備品が正常に動作するか、定期的にチェックする体制を作りましょう
- 少しでも普段と違う違和感を感じたら、報告を上げて、施設内で共有しましょう
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