10Dec
デイサービス等、介護の送迎業務において、具体的にどのようなヒヤリハットが発生しているか? その影響範囲はどこまで及ぶか? 対策をどのように打っていけばよいか?
具体的なサンプルをもとに、紐解いていきます。
今回は、送迎車が施設に戻ってきて、利用者の乗せ降ろしをするために車を駐停車させる際のヒヤリハットを取り上げます。
- 降車時の移動不備
- 利用客と送迎車の接触
- スタッフと送迎車との接触
- 施設玄関ドア開けっぱなし
- 乗車時の案内不備
- 運転操作ミス
- 僚車との接触
- 駐車場付近で遊ぶ子供
- 駐車場付近に落ちている物
- 雨風時
- 駐車場から出る際の人・他車
降車時の移動不備
ハイエース1台が玄関前に到着。指定の降車場所に駐車しないまま、スライドドアが開いており、お客様が次々と単独で下車されていた。以前、尻餅をつかれたお客様がいたので、きちんとスタッフが声かけで下車して頂くことを習慣化していくべき。
センターの前に送迎車が到着し、お客様が車に乗っている状態で側面の扉を開けっぱなしにしていることがある 必ず閉めるようにしないと、離設の危険性が高いと思う。
ハイエースのリフトを上げている時に、側にあった別の車の助手席のドアに当たってしまった。
送迎車の運転はストレスが掛かるので、運転途中にヒヤリハットに遭遇した日などは、施設に無事到着できた段階でほっとして気が緩んでしまうことがありますね。そのスキを突いて、事故が発生することがあります。送迎車が駐車した場所から、施設玄関までも危険がたくさんです。自立歩行ができる方でも、ふらついて転倒するリスクがありますし、認知症の方は施設玄関に向かわずそのまま迷子になってしまうことがあります。送迎車から利用者を降ろす際は、降車案内誘導のスタッフと密に連携をとって行うのが良いでしょう。個別スタッフがバラバラに動くとどうしても混乱しがちなので、すべての送迎車・利用客・案内スタッフの状況を俯瞰的に把握して、適切な案内指示ができる司令塔スタッフを配備できると良いと思います。
利用客と送迎車との接触
送迎車が玄関で停車中、隣の送迎車から降りて来られた●●様が、車の後部に手を掛けながら歩行しておられ危ないと思った瞬間、急に車が動き出した。ヒヤッとした。
センター到着時、車をバックしていた際、サイドミラーを確認しながら下がっていたが、ミラーの死角でスタッフと車椅子が通過しようするのに、気付きませんでした。
エントラスで、●●様が送迎車への乗り込みの移動の際に、車と玄関の間隔が狭かったこともあり、移動しにくく、スタッフの足につまづいた。
朝、駐車場から出る際に、車と車の間にドライバーさんと車椅子がいて、駐車場から出るのに車体がぶつからないか不安を感じた。
ハイエース、センターに到着後バックしようとしたら後ろを●●さんが歩いていたので停止をした。注意をする。
送迎業務では、同じ時間帯に複数の送迎車が施設駐車場を慌ただしく行き交うため、利用者と車とがぶつかる危険性がとても高いです。送迎車は施設玄関入り口のすぐ真ん前に駐車して降車案内を行うのが理想的ですが、状況によっては少し離れた場所に駐めてある送迎車まで移動しなければいけないこともあると思います。利用者は、停まってる車を手すり代わりにして、握ったり寄りかかったりすることがよくあり、それに気が付かずに運転手が車を動かしてしまうと即人身事故に。ハイエースなどの大型車はミラーの死角も多いですし、背の低い車椅子も頻繁に見落としますので、ミラーだけに頼って安全確認をするのは危険です。衝突防止センサーでフォローする方法もありますが、初めから寄りかかってる存在には有効に働かないこともあるので、盲信は禁物です。駐車場へ設置する固定ミラーで、潰せる死角があるかもしれません。
スタッフと送迎車との接触
ハイエースで送迎に向かおうと、センターの駐車場から移動したときに、他のハイエースの陰から社員が出てきて、危うくぶつかりそうになりました。
2便目が乗り換えだったため、車の鍵を取りに来て玄関ドアを開けた際、ハイエースが玄関前に入れようとしていた。ぶつかることはなかったが、ドキッとした。車の出入りの多いときは自動ドアから出入りするようにする。
お客様が乗った車を動かしているとき、スタッフが車の前を横切った。急ブレーキを踏むとお客様が怪我をする恐れあり。
日が短い季節など、スタッフが車から降りて介助をしている時に、後続車にひかれる危険性があるため、反射材などがついたものを着用できるといいと思う。
利用者と同様に、スタッフとの接触事故も、即人身事故なので要注意です。スタッフは一般的に利用者よりも注意能力が高いですが、一方で、利用者より機敏に動き回り物陰から飛び出してくる存在です。また、利用者の案内誘導を行っているスタッフは、利用者が転んだりしないかに注意力を集中させて、周りへの注意が疎かになっていることも想定してみて下さい。駐車場におけるスタッフ移動の動線を予め定めておくと、ドライバーが注意すべきポイントが絞れて良いかもしれません。冬の夕暮れなどは暗くなりますので、駐車場内をライトで明るく照らしたり、スタッフが反射材付きのウェアや帽子を身につけると、ドライバーが視認しやすくなるでしょう。
施設玄関ドア開けっぱなし
朝のお迎えの時間帯、玄関ドアが解放されている。2便に出る際など必ずドアを閉めましょう。
送迎車の1便が到着してお客さまを下ろした後、2便に出発した。その際、玄関のドアが開いたままだった。 中の自動ドアも解放されていたため、玄関ドアを閉める。 誰が離設するか分からないので、ドアは開放しない方が良いと思う。
玄関ドアはこまめに開け締めするか、開けっ放しにする場合は専任の見守り担当スタッフをつけておくと良いでしょう。離設防止センサーなどとの併用する方法もありかもしれません。
乗車時の案内不備
帰りの送迎の乗せこみの要領が悪く、沿道にお客様がたまってしまった。司令塔がいないのが原因です。
ハイエースへの誘導時、玄関前に次の車両のセレナが、バックで入ってきたので、お客様に一旦止まって頂いた。
朝のお出迎え時、エントランスに次々と送迎車が到着し沢山のお客様が乗降待ちしているのに、車両管理台帳の書き込み等を優先し、お客様の対応を後手にまわしているスタッフがたまにいます。書き込みも大切な業務ですが、優先順位を考えて行動に移していくよう、自分自身でも注意していけたらと思います。
送迎車ハイエースで一便目到着したが、付き添い、見守りのお客様が多く、受け入れのスタッフ一人ではとても大変だと思い、直ぐに二便目にでられなかった。フロア内での事故の可能性もあるし、送迎時間の遅れの可能性もあり、慌ててしまった。
帰りの送迎の際も、利用者を送迎車に案内するまでにリスクポイントが多々ありますので、注意が必要です。結局のところは、できるだけ多くのスタッフで誘導し見守ることが一番の安全対策なので、後回しにできる業務が無いか調べた上で当該時間帯のスタッフ配置が見直せないか検討するのが、長期的な安全対策に繋がっていくと思います。
運転操作ミス
朝、車を出そうとした時に、ハンドルがうまく切れず、右側のハイエースにぶつかりそうになってしまった。待機のスタッフに助けてもらった。
送迎前、センターエントランスにて、柱に右後方ブレーキランプを接触させてしまい破損。
センター到着しお客様に降りて頂いた後、駐車をしようとバックした時、フェイスにぶつけてしまいました。
玄関前で下車したハイエースを駐車場に移動する時、後ろの扉が空いたまま発進してしまった。
狭い駐車場で大型車をきっちり並べて駐車するのは、運転難易度が高いですよね。接触センサーなどの導入を検討してみて下さい。
僚車との接触
送迎から帰ってきた時に、スタッフの車が急発進で飛び出て来そうになり、急ブレーキをかけた
敷地内に朝も帰りも車が二台駐車してあり、出入りが難しかった。
16時半になり、送迎車が順に公道に出ていくが、出る順番を決めていないので、送迎車同士で接触事故にならないように注意が必要。
送迎後に停めようと動かすと前から車が入ってきて驚いた。
セレナをしまおうとしたら、軽がバックしてきて、追突されそうになる。
送迎から帰ってきて、車を駐車しようとしたら、スタッフのバイクがいきなり出てきた。
センター駐車場内での、車同士の接触インシデントです。お互い徐行でスピードが出ない状況でゴツンとぶつかる程度であれば、人身事故と比べると大したリスクでは無いとも言えます。駐車場内での移動可能進路や、車同士でお見合い状態になった場合に、どちらが優先となるかなど運用ルールを定めておくと、事故リスクを避けつつ効率の良い移動ができるかもしれません。
駐車場付近で遊ぶ子供
センター敷地内駐車場・夕方の送迎車準備スペースにて、近所の方が小さな幼児を連れて遊ばせていた。夕方の送迎時間帯であり、ハイエースなどでの車をバックすると、死界で見えず撥ねてしまう可能性高い。スタッフにも声掛けした。
センター出口の道路で、子供が遊んでいる、非常に危険だ。
14時前、上階に住む子供が、センター駐車場を自転車でぐるぐる走っている。時短送迎者もいるので危ないと感じた。今度来たら注意する。
センターから、道路に出る際に徐行はしていたものの、一時停止が不十分のため、歩行者を見た時にヒヤリとしました。今後、このような事がないように気をつけていきます。
ある程度の広さがある駐車場は、子供の遊び場にうってつけです。入り込むのを完全に防止するのは困難だと思いますので、子供が潜んで居るかもしれない前提で安全確認しましょう
駐車場付近に落ちている物
センターの駐車場に大きな錆びたクリップが落ちており、タイヤに刺さる可能性があったため、拾って捨てました。
センター駐車場から道路に出ようとした際、雑草が伸びていたため、横からの車両が見えずに急停車してしまう。
駐車場内の清掃や整備は、定期的に行うように業務として定めておくと良いでしょう。
雨風時
雨が降っていた。帰り送迎の際、エントランス横にセレナを配置する。思ったよりも雨が強く、傘をささないと濡れてしまう可能性があった。
送迎が終わった後、車両を所定の場所に移動。下車しようと運転席のドアを開けたところ、強風にあおられ、隣に駐車してあった車両に強く接触してしまった。
今日は雨が降っていた影響なのか、送迎車到着時のお出迎え、フロアーへのご案内対応が遅かった。悪天候な時ほどお客様第一の対応を心掛ける必要がある。
雨や風の日は、いつもより条件が悪くなるので、急がず、いつもよりも注意して誘導案内を行う必要があります。
駐車場から出る際の人・他車
送迎に出ようとセンターの駐車場から車道に出ようとする時に、左側から歩行者が接近して危ないと感じました。歩道前で一旦停止する必要があると思います。
センター出口の道路に、車が駐車している。危ない。
朝の送迎時、乗車が終わり出発しようとしたが施設の車が出口ギリギリまで留まっていたので、道路に出るところが狭く車の接触の危険があった。
センター前の道路の交通量が多い場合は、道路側で一人、送迎車を安全に道に出すための交通誘導スタッフを置いたほうが良いかもしれません。
どのようにすれば事故を防げるでしょうか?
- 送迎車から利用者を降ろす際は、降車案内誘導のスタッフと密に連携をとって行うようにしましょう
- すべての送迎車・利用客・案内スタッフの状況を俯瞰的に把握して、適切な案内指示ができる司令塔スタッフを配備しましょう
- ルームミラー/サイドミラーの死角の安全確認も怠らないようにしましょう
- 送迎車に、バックカメラや360℃パノラマカメラの設置検討をしましょう
- 送迎車に、衝突防止センサーや接触センサーの設置検討をしましょう
- 駐車場内の死角を固定ミラー設置で無くせないか検討しましょう
- 駐車場における、スタッフ移動の動線を予め定めておきましょう
- 夕暮れ時は、駐車場内をライトで明るく照らしましょう
- 駐車場内を移動するスタッフには、反射材付きのウェアや帽子を身につけさせましょう
- 利用者の送り迎え時は、玄関ドアはこまめに開け締めするか、開けっ放しにする場合は専任の見守り担当スタッフをつけておきましょう
- より多くのスタッフで誘導し見守ることができるよう、後回しにできる業務が無いか調べた上で、当該時間帯のスタッフ配置が見直せないか検討しましょう
- 離設防止センサーなどで、見守りスタッフが利用者の離設を見落としてしまうのをフォローしましょう
- 駐車場内での移動可能進路や、車同士でお見合い状態になった場合に、どちらが優先となるかなど運用ルールを定めておきましょう
- 駐車場で子供が隠れんぼをして遊んでるかもしれない運転を心がけましょう
- 駐車場内の清掃や整備は、定期的に行うように業務として定めておきましょう
- センター前の道路の交通量が多い場合は、道路側で一人、送迎車を安全に道に出すための交通誘導スタッフを配備しましょう
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