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株式会社ケアレンツ

リモートリハビリで開く新しいキャリアと、具体的な実施ノウハウ

  • 2021
  • リモートリハビリで開く新しいキャリアと、具体的な実施ノウハウ はコメントを受け付けていません

 本資料では、セラピスト(PT・OT)が、介護施設(老人ホーム)に対して、オンライン環境でリモートリハビリを提供した実例を記します。また、リモートでリハビリ提案活動を行うにあたり、具体的な段取りや、うまく進めるためのノウハウ実例を記します。

 以下の方を対象とします。

  • リモートで利用者とコミュニケーションを行いたい方
  • リモートで通信不具合などに困ってる方
  • リモートでリハビリを行いたい方

ケアレンツ社事例:新型コロナ以前に提供していたサービス

 自立支援介護が求められている昨今の状況において、老人ホームなどの介護の現場では、入居者のリハビリをどのように行っていけばよいのか、忙しい現場の介護職員の方々が日々頭を悩ませています。

 一口に自立支援と言っても、その領域は様々です。食事や排便を一人で行えるようにするという基礎的なADLの領域から、買い物や旅行を行えるようにするなどのIADLの領域に至るまで、利用者が何を望むのか、把握しなくてはなりません。

 その上で、利用者の残存機能を的確に把握し、その利用者に適したリハビリ運動メニューの提案・利用者をフォローするための福祉用具の選定と使い方の指南・利用者を取り囲む生活環境の調整などを行うには、高度な知見が必要になります。

 ケアレンツ社ではリハビリ専門職であるPT・OTが介護の現場に出向き、その専門的な知見を現場に伝える取り組みを、数年前から実施してきました。

 流れとしては、概ね一週間に一度、施設を訪問します。施設職員の方と一緒に各入居者と会い、入居者の主訴を伺い、残存能力把握のアセスメントした上で、リハビリ運動や福祉器具・環境調整の提案を行います。

 リハビリ運動も器具調整も一度設定したら終わりではありません。モニタリングとして、次回訪問時に経過状況を伺って、設定したリハビリ運動の運動強度の再調整や福祉器具・環境の再調整を行っていくことにより、継続的に実効性のある取り組みとすることができます。

緊急事態宣言の発令

 都心部における緊急事態宣言の発令に伴い、施設への外部人員の立ち入り制限が掛かりました。入居者家族すら制限が掛かり、週1のセラピスト訪問も実施不可能な状態です取り組みの中断は、直ちに介護施設の機能不全にはなりませんが、中断期間が長引くと影響がじわじわと出てくる懸念が想定されました。既存の入居者のモニタリングも途絶えますし、新規入居者の環境設定の相談もできなくなります。そして、東京都の感染者数の推移状況から、緊急事態宣言期間が長引くと予想しました。

 そこで、緊急事態宣言の間、オンライン環境を使ったリモートでのリハビリ相談を行うことを、提案しました。以下は、提案の際に作った資料の一部です。 

リモートでのリハビリ実施可能範囲

 リモートでテレビ電話越しに、どこまでリハビリ案内ができるでしょう? 以下の図を御覧ください。

 テレビ電話越しだと全くできないのが、触診関連です。ですので、触診による情報が判断材料として必要なアプローチは、断念せざるを得ません。

 一方で、今回のリモートリハビリの場合、介護施設のスタッフが入居者の側に居る前提ですので、例えばバンザイさせたときに入居者の肩がどこまで上がりそうかといった確認は、施設スタッフの補助のもとに実施が可能です。

 実際に、今回のリモートリハビリにおいて、以下のようなことが実施できました。

  • ベッドから室内トイレまでの移動の評価。転倒防止を目的とした、家具の配置アドバイス
  • 臥床時のポジショニング、拘縮防止策の相談。クッション調整
  • 車いすの座位姿勢評価。車椅子の背張り調整
  • 車いすの座位姿勢評価。背張り・クッション調整。食事評価
  • 座位姿勢の評価と、リハビリ運動確認。座位姿勢安定のためのレンタル品選定相談
  • 座位姿勢の評価と、食事評価。食器選定アドバイス
  • 円背と歩行のアセスメント実施。座位姿勢保持のクッション提案と、タオルを使った応急的な調整提案。リハビリ運動提案
  • 廊下を歩いて歩行評価。リハビリ運動提案。居室内の家具配置提案
  • リハビリ運動の進行に関する相談
  • セーフティーウォーカーの使用に関する相談

 なお、対応内容によっては医師の事前診察が必須で法律に抵触する懸念もありますが、現場の方はそのあたりを意識せずニーズを上げて来ることが多いので、【どこまでできるか・どこまでやっていいか】については、先方に予め懇切丁寧に説明して理解を得ておくのがとても大事です。

準備物

 セラピストと施設職員とで、テレビ電話を使い、スマホ等の通信端末のカメラ越しに会話をできるようにすることが、必要最低限のやるべきことです。

端末

 まずは、テレビ電話端末(スマートフォン、または、タブレット端末)を、セラピストと施設の両方に用意します。セラピスト側は、画面越しに入居者のアセスメントを行うことを考えると、画面サイズが大きいノートパソコンなどを大きいほうが細かいところまで見やすくてやりやすいです。施設側は、入居者の撮影を行うので、持ち運びができる小型端末が必須になります。

ヘッドセット

 テレビ電話においては、相手の話す声にノイズが入ってかすれたり、こちらの話す声に周囲の雑音が入って相手が聞きづらくなることが多発します。セラピスト側は、テレビ電話用のヘッドセットを用意すると、これらの問題が軽減できてコミュニケーションが効率的になります。

通信回線

 通信回線については、その建物に光回線が敷いてあって、施設内に設置されたWifiルーターによってWifiアクセスポイントが用意されていれば、テレビ電話を行うには十分な速度が通常は確保できるはずです。施設に固定通信回線が用意されていない場合は、LTE通信回線(Docomo / AU / softbank などの無線通信回線)でも大丈夫です。

テレビ電話サービス

 有名どころで、無料または安価で使えるテレビ電話(Web会議)システムは、以下のようなものがあります。

  • LINE ビデオ通話
  • Zoom
  • Microsoft Teams
  • Google Meet

 細かい機能差はありますが、概ねどれでも用は成しえます。ただし、施設毎にバラバラに使い分けると混乱するので、どれか1つに絞ったほうが良いでしょう。

 ケアレンツでは、今回は Zoom を使用しました。それまでも使っていて使い慣れていたのと、低速度の通信回線でも途切れずに通話ができることを実績として確認できていたためです。

 どのテレビ電話サービスも、概ね、会議IDとパスワードを発行して、それを相手に教えて接続してもらう方式になるかと思います。(LINEビデオ通話の場合は、相手のアカウントを直接指定して電話を掛けられるのでより楽ですね)

タブレット端末&通信回線のレンタル提供

 施設側に、テレビ電話のための設備が整っていないことは、珍しくありません。フリーで使えるタブレット端末やスマートフォンは置いて無いことが多いですし、そもそも施設内にWifi アクセスポイントが用意されていないこともまま有ります。

 また、タブレット端末が有っても、端末に制限が掛かっていてテレビ電話用のアプリを追加でインストールできないことが有ります。

 このような場合にてっとり早いのは、こちら側でタブレット端末と通信回線を用意して、施設側にレンタル提供することです。タブレット端末は1台数万円程度、通信回線は月々1000円程度の格安SIMで概ねまかなえます。

 施設側が操作に手間取ったときも、こちら側の手元に同じ環境を用意しておけば、オンラインでのサポートがしやすいのもやりやすい点です。

通信回線の選定

 施設側に、Wifiアクセスポイントがある場合は、それの使用が前提になります。(ただし、タブレット端末のみをレンタル貸し出しして施設側のWifiアクセスポイントに接続させるパターンの場合、いざ接続しようとすると繋がらないリスクがあります。施設側Wifiアクセスポイントにキツめのセキュリティが施してあって、予め指定した特定機器以外からの接続をさせない設定にされてる場合です)

 施設に固定通信回線が用意されていない場合は、LTE通信回線(Docomo / AU / softbank などの無線通信回線)を用意する必要がありますが、多くの通信業者がサービスを提供しています。どれが良いでしょうか?

大手3キャリア回線
 Docomo

 AU
 Softbank
・値段が一番高い
・通信が安定
大手3キャリアサブブランド回線
 ahamo

 UQ mobile
 Y!mobile
・毎月2000円~
・通信が比較的安定
格安SIM (MVNO業者)・毎月1000円~
・多くの人が利用するお昼や夕方の混雑時間帯に通信速度が低下

  個人的には、中間のサブブランドがもっとも適していると考えます。一番安い格安SIMでも通常は大丈夫ですが、混雑時間帯で速度低下して、テレビ電話中に映像や音声が途切れると、かなりのストレスになりますので。

施設側への説明資料

 確実に必要になります。丁寧に作ったほうが良いやつです。

 「このぐらい解るだろう」という期待で作って、途中の手順を省略したりすると、そこで施設側の操作がストップして問い合わせが増えますので、双方にとって結局効率がわるいことになります。

スマートフォン用 広角レンズアダプター

 入居者様の様子を、施設職員の方に撮影してもらう際に、大変便利なのが、広角レンズです。

 通常、スマートフォンやタブレット端末のカメラは、あまり広い範囲を撮影できないので、例えば入居者の全身をカメラのフレームに納めたかったら、かなり離れて撮影する必要があります。ただ、離れすぎての撮影はいざ転んだときに身体が支えられなくて危険ですし、室内では物理的に離れることができないなどの制約が発生します。

 端末のカメラに後付でくっつけるタイプの広角レンズアダプターを使うと、標準より広い範囲を撮影できるようになり、撮影が凄く楽になるのでオススメです。安いやつだと、100円ショップで入手可能です。( ”魚眼レンズ” と書いてあるやつは違うので注意 )

 

リモートリハビリ開始前の前準備

 準備物の用意が一通りできて、施設側にも必要な資材と情報を送って、さあスタート…とやるのはちょっと待って下さい。必ず、一度は事前にお互いテレビ電話ができることを確認する一手間を掛けたほうが良いです。

 ケアレンツでは、リモートリハビリ開始の前日等に施設側に時間をもらい、電話を掛けて、実際にテレビ電話ができるか試す確認作業を挟みました。

 実際に、こういうトラブルが発生します。しました。

  • 端末の電源がオンにできない(やり方がわからない / バッテリーが切れてる)
  • 通信ができない(セキュリティ認証に阻まれている)
  • 通信ができない(電波が届かない部屋でやろうとしてる)
  • 予め送ったマニュアルが届いてない/読まれてない
  • テレビ電話アプリの立ち上げ方が分からない
  • 予め送ったテレビ電話用のID/パスワードが届いていない
  • 映像が出ない
  • 映像が出るけど音声が聞こえない
  • 音声は聞こえるけどマイクがオフになっていて喋ってる声が聞こえない
  • インカメラとアウトカメラの切り替えができない

通信関連トラブル

 対応に時間が掛かることが多いので、一番なんとかしておきたいところです。

 こちら側からレンタルで送った端末で、施設側に予め用意されているWifiスポットに繋ぐパターンの場合、施設側Wifiスポット側で予め認証した端末以外は通信させないセキュリティ設定が掛かってる場合があります。これは、こちら側でも施設職員側でもその場ではどうにもならず、Wifiスポットを管理している技術者の対応が必要になります。

 電波の届かない部屋(会議室など)で通信しようとして接続できない場合は、Wifiスポットの置いてある部屋(事務所など)に移動してもらうと、うまく接続できる場合が多いです。

 施設のWifiに繋げずに、LTE回線を使って接続する場合も、建物の奥の方だと電波が届きにくく、通信が途切れがちになることがままあります。この場合は、窓際に行って貰って、状況が改善するか確認するとよいでしょう。

端末操作トラブル

 「電源ボタンを長押しすると端末の電源が入る」というところから理解されていないことがあります。確かに一部の機種は、結構長いことゆっくり長押ししないと反応しない、というのもあるのですが。

 アプリのショートカットアイコンは、画面上の目立つ位置に置くようにしたほうがいいでしょう。その他の余計なショートカットアイコンは、混乱の元になるのでできるだけ消しておくと良いです。

 テレビ電話認証用のパスワードは、アルファベットの大文字小文字や記号文字を混ぜ合わせた長くて複雑な文字列に設定すると、概ねどこか1文字入力をミスります。セキュリティの担保は重要ですが、テレビ電話の場合、不正な第三者がもし入ってきてもすぐに気付いて追い出せるので、複雑にし過ぎなくても大丈夫だと見込まれます。

音声関連トラブル

 テレビ電話の場合、映像は比較的パッと出てくるのですが、音声のやりとりで一苦労することが結構あります。こちらが喋ってる声は向こうで聞けるけど向こうが喋ってる声はこちらには聞こえないとか、その逆のパターンとかですね。

  • アプリにマイク・スピーカー利用の権限を与えていない
  • 音声ミュートのボタンを押してしまっている(向こうの喋ってる声が聞こえない)
  • スピーカーのボリュームを最小かサイレントモードにしてしまってる(こちらが喋ってる声が聞こえない)

などが良くありがちなトラブルパターンで、お互いに音声会話ができない状態だと身振り手振りで操作指示をするのは困難なので、別途電話で会話しつつ問題解決に当たったほうが効率的です。

 また、これはレアパターンですが、端末のスピーカーやマイクがそもそも物理的に故障していたことがありました。端末自体を交換する必要がありますが、応急措置として、イヤホンマイクを使うと通話ができるようになります。(100円ショップで入手できます)

映像関連トラブル

 だいたいの機器の場合、内側のインカメラ(自撮り用)と外側のアウトカメラの2つが備わっており、テレビ電話アプリの設定操作でどちらを使うかを選ぶことができます。この操作も、慣れて無いと結構戸惑います。

 基本的にはインカメラが初期に設定されていることが多いので、そのまま話す分には問題がありませんが、例えば Zoom の場合は画面上の切り替えボタンをうっかりタップするだけでアウトカメラに切り替わるので、意図せぬ操作で戸惑うことがよくあります。

 また、入居者様の歩行状態を評価する際などは、アウトカメラに切り替えたほうが撮りやすいので、インカメラとアウトカメラの切り替え操作は、事前準備の段階で慣れておいて貰ったほうが効率的です。

リモートリハビリ開始段階でのコツ

 前段の前準備段階で一通りの確認作業を済ませましたので、いよいよ本番です。

 約束した時間になったら、お互いテレビ電話アプリを立ち上げて、予め通知した会議室IDとパスワードを入力してテレビ電話を開始するだけですが、ここでもつまづくことがあります。

  • 先方が約束そのものを忘れている
  • 先方でトラブルが発生して対応に追われている(入居者の容態急変など)
  • テレビ電話の操作のやり方を忘れてしまっている
  • 端末のバッテリー切れで電源が入らない
  • 別の会議室IDと取り違えてしまっている

 お互い、約束した時間にちゃんと待ってるのに待ちぼうけを喰らわされるのは辛いので、リアルタイムで即応的に連絡できる手段は確立しといたほうが良いです。電話ですね。(昨今、電子メールやメッセンジャーベースでのやりとりをしてると、電話番号の交換をうっかり忘れることがよくありますので)

 入居者の容態急変などのハプニング発生時は当然そちらの対応が優先されるので、そのような事態になった場合にはどうするか(リスケや休止など)、予め決めておくとお互い円滑になります。

テレビ電話中の注意点

 テレビ電話が無事できた後の、やってる最中に出てくるトラブルへの対応です。

  • 途中で映像や通話が不安定になる
  • 端末が加熱してカメラが停止する
  • 施設スタッフの疲労

 デレビ電話の最中に、通信状況が悪くなり、映像が乱れたり音声が途切れたりすることがあります。応急対応策としては、カメラだけオフにすると、音声通話だけでもスムーズにできることがあります。 

 テレビ電話アプリ稼働時は、端末のCPUとカメラがフル回転するので、熱を持ちやすい状態になります。夏場の暑い時期などは、冷却が追いつかずに熱くなりすぎ、端末の保護機能が働いてカメラが自動的に一時停止することがあります。

 入居者の撮影をしつつテレビ電話で相談するのは、慣れないうちは結構な疲労感が出るので、1回のテレビ電話時間は1~2時間程度に留めて置いたほうが良いかと見込まれます。

実際にやってみての反応

 リモートでリハビリが本当にできるのか? 不安要素は多くありましたが、実際にやってみると施設スタッフの方もすぐに慣れ、かなりスムーズにことを進めることができました。

 想定外の効果としては、入居者の方が「テレビ電話越しの会話」を物珍しがってくれたので、普段より反応が良くなった事例がしばしば見られました。

 触診ができないということでどうしても限界はありますが、例えば初回のアセスメントだけは実施訪問で行い、以降のモニタリングをリモートで行う複合技なども考えられますので、是非試してみてください。

 やってみたいけど実施において不安が大きいという方は、ケアレンツ側での実施サポートも可能ですので、ご相談下さい。

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