10Oct
デイサービス等、介護の送迎業務において、具体的にどのようなヒヤリハットが発生しているか? その影響範囲はどこまで及ぶか? 対策をどのように打っていけばよいか?
具体的なサンプルをもとに、紐解いていきます。
送迎車には、スイッチのON/OFFで動作する機器が多数備わっています。介護用の車には、車椅子を載せ降ろしするためのリフトやワイヤーウインチなど、特有の機器が追加されており、特段の注意が必要となります。
- 前照灯(ヘッドライト)
- ブレーキランプ・テールランプ
- 室内灯
- ワイパー
- エアコン
- 電動補助ステップ
- 車椅子用リフト
- 車椅子固定用ワイヤーフック
- リフト操作用リモコン
これら機器の動作不良に関するヒヤリハットを見ていきましょう。
送迎車のライトが暗く運転しづらいです。
冬の夕方の真っ暗な中で、街灯の無い狭い住宅地道路を走行することもあります。黒い服を着た歩行者に直前まで気が付かなくてヒヤッとした経験、貴方にもありませんか? 道に落ちてる石などに気づかず乗り上げて、車内の利用者に衝撃で怪我を負わせるリスクも想定されますね。
汚れでレンズが曇ってる場合は磨けば改善されますが、長年使ってる車ならライトの寿命で徐々に劣化していくので、思い切って明るいライトに交換するのも効果的です。
ハイエース1号車を送迎準備で玄関へ準備していた際に、運転席側のブレーキランプのランプ切れでつかない状態を発見したので、ドライバーさんに伝えた。
ブレーキランプやテールランプの不具合は、ドライバーはなかなか気が付けない、という特性があります。街中を走ってるとチラホラ見かけますよね、片側だけ切れて点かなくなってたりする車…。
後続車にブレーキ案内を適切に出せないと、衝突事故を誘発するので、定期的なチェックで早めの発見と修理交換が大事です。
1号車のウォッシャー液がなくってワイパーを使った時にフロントガラスの汚れが取れませんでした。定期的に確認が必要と思われます。
停車中ワイパーの速度が遅くなってしまいました。
雨の日や雪の日にしか使わないワイパーまわりも、普段は動作不良に気が付かず、いざ使う時に動作不良になったときは大変困る機器です。雨の降る中で傘差しながら対応するのは嫌なので、晴れの日に気づいて対応できるといいですね。
停車中にワイパー速度が遅くなったら、バッテリー低下の予兆かもしれませんので、情報共有して早めに対応したほうがよいでしょう。
バネットのエアコンが効かず、お客様が暑がっていた
ハイエース4号車の車両のエアコンの調整ノブが破損してます。
エアコンはもはや必須装備ですね。利用者の体調不良リスクに直結します。
●●様をハイエースでお迎えにあがった際に、ドアのステップが出てこなくて、高さがあるまま乗車していただいた。
●●様を送迎車に乗車誘導中、悪天候の影響でステップが滑りやすくなっており、足元が滑ってバランスを崩される。スタッフが近接介助していたため、転倒せずにすむ形となる。
新しいハイエースは、停車後パーキングに入れないと、足下のステップが出ません。添乗のスタッフが降りる際に、ステップが出なくて、転倒しそうになりました。
朝送迎の車点検した所、サイドステップが出たままだった。
バネットが半ドア状態で、ステップがちゃんと収納されてなかった。発車前に気が付いたため、事故にはならなくて良かったです。
ハイエースを走行中にステップが出てくる。ドアが閉まりきっていなかったと思われる。
●●様宅にハイエースを停める際、扉のステップが縁石に当たりそうになる。
足腰の弱った利用者の乗車&降車のサポートをする電動補助ステップは、不具合が即転倒事故に直結しますが、ヒヤリハット報告も多発しています。日常的に踏みつけられるという運用をするためでしょうか?
補助ステップがあるのが当たり前になると、利用者も【そこに踏み台が有るもの】として身体を無意識に動かすようになるので、ある日突然そこにステップが無いと、身体のバランスを崩してしまいます。乗降介助するスタッフ側にも、同様の油断が生まれますね。
電動ステップはいつ動作不良を起こしてもおかしくない、という心構えを持った上で、乗降介助の際にはステップが出ているか都度チェックをし、出てこなかった場合の介助パターンも想定して予習しておくとよいでしょう。
また、走行中、意図せず出てくるステップもドライバーを動揺させて運転ミスを誘発しかねません。半ドアの状況下で発生が報告されているようです。
リフトが途中で止まり動かなくなる。その後緊急操作し、復旧した。
ハイエースのリフトが動かなくなったという相談を受け対応した。全職員が認知するように留意していきたい。
エンジンをかけずにリフトの乗せこみをしてしまい、バッテリーが上がってしまいました。
朝の送迎時ハイエースのシフトレバーがドライブのまま車を降りてしまいましたが、リフト操作時の警告音でお客様が乗る前に気がつきました。
ハイエースのリフトを調査していたところ左腕をリフトと挟まれそうになる。
リフトに関しても、人を乗せて大きく動かす機器のためか、動作不具合の報告は多く見られます。車椅子の方をリフト無しで乗せるのは困難なので、代車手配などで時間と手間が大きく取られますね。少しでも動作に不調や不安を感じたら、即座に情報共有して、その車は検査・修理が完了するまでは使わないようにする運用ができると望ましいです。
事故リスクが高いのは、上げ下ろししている最中にリフトが止まる事例です。ご利用者様にも怖い思いをさせてしまいますし、最悪、パニックを起こされて独力で降りようとされるかもしれません。手動で安全に降ろす手順も用意されているので、車のマニュアル等で予習しておくとよいでしょう。
リフトの周りで乗降補助を行うスタッフがリフトに巻き込まれる労災ヒヤリハット事案も見受けられますので、安全な立ち位置などもマニュアルに定めて職員研修で身につけておくのが大事です。
ハイエースのリフトのワイヤー、スイッチがはいっていたにも関わらず、たるみがありました。声出し確認していたおかげで気付くことが出来ましたが、徹底する必要性を感じました。
走行中、ワイヤーフックが収納部から外れ、警告音が鳴った。
お客様乗車後、ワイヤーフックのアラームが鳴り続ける。ワイヤーはしっかりと張られていて、問題は無かった。
ハイエース1のリフトのワイヤーが切れかけているので、気をつけて下さい。
11号車の車椅子の固定ワイヤーのところにボールペンが落ちていて巻き込まれていました車が故障の原因になります
NBOX で送迎時車椅子を降ろしていたら左にかたよるため、不思議に思いながら脱輪しないように注意しながら降ろしたフックを外すと、左右別の場所に引っ掛かけられており、それが原因でかたよっていたことがわかった。乗車時、右と左のフックを、それぞれ別のスタッフがかけたためと思われる。
車椅子を送迎車内にワイヤーフックできちんと固定する作業、大変忘れられがちです。急停車の際、車椅子が車内で暴れまわる重大なリスクとなり、極めて危険です。(このあたりは、別項で詳細に記述します)
一方で、出発時にちゃんと正しく固定作業の操作をしたにも関わらず、機器の不具合できっちり固定しきれてなかったりするインシデント事例も発生しています。また、走行途中でワイヤーが緩んだり、ワイヤーが緩んだとアラートが誤作動したり、なども。
毎日行う作業は、慣れと油断でうっかり一部工程を忘れちになってしまうのは、人間がやる以上必ず発生しうることなので、指差し確認(指差喚呼)でチェックするルールを定着させるのが大事です。
どのようにすれば事故を防げるでしょうか?
- 送迎車輌の稼働機器一覧を、リストにまとめましょう
- それぞれの器具について、動作不具合を起こすか、想定してみましょう
- 実際に動作不具合が起きたら、最悪どのような被害が出るか、イメージしてみましょう
- 動作不具合が起きた時の、手動でのリカバリー体制を検討しましょう
- 各機器が正常に動作するか、定期的にチェックする体制を作りましょう
- 少しでも普段と違う違和感を感じたら、報告を上げて、施設内で共有しましょう
- 少しでも不安を覚えたら、車両管理の専門家に相談しましょう
送迎車 定期点検 虎の巻
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