10Nov
デイサービス等、介護の送迎業務において、具体的にどのようなヒヤリハットが発生しているか? その影響範囲はどこまで及ぶか? 対策をどのように打っていけばよいか?
具体的なサンプルをもとに、紐解いていきます。
送迎車を運転中、道路には歩行者・自転車・駐停車中車両・ゴミなど、様々な障害物があります。
人や車などの障害物は当然ぶつかってはいけませんし、避けて通る際に注意力を消耗しますし、車体が揺れます。場合によっては本来のルートを迂回せざるを得なくなり、時間の遅延が発生する可能性が高くなります。
- 狭い道を更に狭める歩行者・駐停車中車両
- 交差点を右折・左折した先に居る歩行者
- 進路を塞いで後方からの車に気がついてくれない歩行者
- 交差点付近で右左折をし辛くする障害物
- 暗くなると気づき辛くなる歩行者
- 雨が降ると気づき辛くなる歩行者
- カーブの先の死角に居る子供
- いつも通る道を塞いで通行不可能にしている工事車両や引っ越しトラック
- 前走車の荷台から落ちてくる荷物
- 道に落ちているゴミや動物の死体
これら、道路上障害に遭遇した際、どのようなリスクが発生するか? 実際のヒヤリハットを元に、見ていきましょう。
●●様宅周辺、散歩に出ている歩行者多く、交差点などで注意してください。(洗車をしている人が道路中央側でしゃがんでいたりもしました)
中学生が登校するようになり、道路が狭くなってきている。学生は車の確認をせずに車道に出てくる子供もいるため、なお注意が必要である。
朝の送迎時、抜け道を使い大通りに出る手前で、左側から小学生の集団が通ろうとしていた。徐行していたため問題はなかったが、通学の時間帯は特に注意が必要です。
横断歩道のある交差点で、集団の高校生が、道路に飛び出して信号待ちをしている
住宅街など歩行者が多いところでは、走行可能な道幅が地図で見るよりも狭くなっていることが多いですね。駅前や通学路などでは、大勢の人が広がって歩いていて、車一台が通るのも徐行しながらやっと、ということもよくあります。逆に、一見広めの道でも30km/hの速度制限指定が有る道は、何らかのリスクが想定されていることが多いので、うっかり飛ばしすぎないように注意しましょう。特に送迎車の場合、急ブレーキは送迎客の身体にダメージを与えてしまいます。
右側に曲がろうとしたら、高齢者の方が、道の真ん中を歩行器を押しながら、歩いていた。
交差点を左折しようとしたところ、左折側の歩道から人がはみ出していて危険だった。
左折時、横断歩道を歩行している方が視角に入り見にくかった。
右折・左折した先の、車の進路のちょうど先を塞ぐ形になっている歩行者の存在は怖いですね。交差点を曲がる運転の際は、運転席左右のAピラーが視野を遮って、歩行者を見落としてしまうことがよく有ります。Aピラーの死角は意識してチェックするように心掛けるのが良いと思います。また、特に右折時は、対向車線から来る対向車に意識を向けすぎてしまって、右折した先の歩行者への注意が散漫になるのも定番のヒヤリハットです。
歩行者が暗くなると見にくくなった。
夕方の送迎時、上下黒の服を着た人が歩いており、認識するまでに時間がかかった。
●●デイサービス近くの交差点左折時、小学生低学年の児童が小走りで斜め横断し、薄暗く発見が遅れてヒヤリした。
帰りの送迎時、●●の辺りで、おじいさんとおばあさんが真っ黒い格好をして暗闇の中を歩いていた。全く見えず危なかった。
夕方の送迎後、堤防沿いを走行中、歩道ではない道路を腰の曲がった高齢者の方がシルバーカーを押しながら歩いていらっしゃった。5時半を過ぎており、雨も少量降って道路の見通しが悪く、街灯もなく真っ暗だったため、ひやりとした。スピードを出さず、しっかり確認しなければならなと思いました。
帰りの送迎で、暗くなると、歩行者は視認し辛くなります。白系統の服を着ていたり、反射材を付けていたりしてくれている歩行者は目立ってありがたいですが、そちらに気を取られて同じ道にいる黒系統の服を着た歩行者を見落としてしまった、なんてのもよく有るヒヤリハットです。背の低い子どもや犬なども見落としがち。ヘッドライトのハイビームも活用して、なるべく早めにチェックするように心掛けて下さい。
雨のため渋滞があり、送迎が遅れてしまいました。傘をさしている歩行者が急に車道の方に寄って来るのが怖かったです。
雨天では、歩行者にタイヤから跳ねた雨水がかからないよう留意する。
雨の日は特に、傘をさした歩行者が道幅を取りますし、道路も滑りやすいので注意が必要です。傘をさした歩行者は視界が傘で遮られて狭まっているので、こちら側に気づき辛くなっているという想定をして下さい。また、水たまりの水をハネて歩行者に浴びせてしまうとこれまたトラブルになりますので、水たまりを補足したらゆっくり走るか、歩行者とすれ違わないタイミングを狙うようにしましょう。
交差点を右折の際、横断歩道の歩行者に気付くのが遅れ寸前のところで交わした。
朝の送迎時、駐車場から二人歩行者が横断してきたので渡り終えた後、安心してしまい車を走らせたところもうひとり歩行者が出てきてしまった。
送迎時に交差点で右折待ちをして、右折の矢印→が出たので、右折しようとしたら、横断歩道を歩行者(若者の男性)が渡って来ました。交通ルール無視でした。なので、私は右折出来ずでした。
横断歩道でない場所を通過しようとする歩行者あり。人通りも車通りも両方多い場所の為、速度に注意しいつでも停められるよう気をつけてください。
交差点の右折は、車と歩行者の接触事故が特に多いシチュエーションです。お互い信号に急かされて慌てて動いてしまうので、注意力が散漫になってしまうんですよね。右折前に交差点中央で一時停止してから、対向車や歩行者が来てないことをしっかり視認した上で、進むことです。歩行者側でありがちなパターンとして、黄色の点滅信号も終わりかけの頃に横断歩道に入ってきてそのままゆっくり歩く人がよく居ます。信号を盲信するのも危険で、目視確認は常に大事です。
夕方の送迎時 狭い道路で、前方に老夫婦が歩かれているのを発見する。耳が遠いからか、しばらく気づかれず。そのまま追い越していたら、接触事故を起こす危険性があるため、今回のように待つ必要があります。乗車されているお客様は、『クラクションを鳴らせばいいんじゃない?』と言われたが、びっくりして転倒する危険もあったため、そのまま様子を見ました。
狭い道を男の人が歩いていてその人にクラクションを鳴らしたところ来るクレームでこちらに電話があったそうです
道を塞いで歩いてる歩行者が、後方から来るこちらの車に気がついてくれないこともありますよね。耳が遠かったり、イヤホンをしていたり、お喋りに夢中だったり。だからといってクラクションを鳴らしてどかそうとすると、道交法違反になりますし、クレームの元となります。
●●様のお迎えで、バックで家の前まで侵入したら、右後ろに小さな子供がいた。視界に入らずびっくりした。
●●様のマンション前の道路の左側を犬を散歩させている親子が並んで歩いていた。子供の方は、左手で犬のリードを握り、右手にバスケットボールを持って上に投げて、キャッチしていました。受けそこないボールが転がってきましたが早めに気がついたので事故にはなりませんでした。
住宅内の道路のカーブを曲がったところで子ども達が道路に絵を描いて遊んでいた。
子供が歩道を走っており、子供の親もいたが、子供と距離が離れていた。急に路上に出てくる可能性もあるため、注意する。
子どもは特に、どういう動きをするのか予測困難ですので、視認したら特に注意して、いつでも止まれるように速度を落としつつブレーキを踏む体制を取ったほうが良いでしょう。
●●さん宅を出発する際、犬の散歩する方が避けてくださっていることはわかるのですが、左折時後輪を落としそうになりました。
細い道に入る際に、右側にいた女性(家の前の草むしりをしていた)方を避けようとしてブロック塀に接触しそうになったが、ブレーキにて回避した。細い通路にいる人を添乗が誘導すべきでした。
道路上の歩行者や障害物を避けようとして膨らみ、反対側の溝にタイヤを落としてしまったり壁にぶつかってしまったりも、大変多い事例です。ギリギリいけるかどうか…?と不安になった場合は、無理せずに添乗人員の誘導の元に進むなどの安全策を取ったほうが、結果としては時間短縮になるでしょう。事故処理はとにかく面倒くさいですからね。
●●様宅付、近新築工事のためトラックが止まっていた。バックをして違う道から行った。
●●様のお宅前にトラックが停まっており、移動できないと言われ、手前の道に停車し、●●様に降りていただく。
清掃車が停止し作業していたことで通れなかった。抜け道もなく、待ったが遅れが生じてしまった。
●●様宅に送迎の際、角の空き地に家を建設予定で、工事車両が停車。通行出来ませんでした。今後、一本手前の道から進入し、少し歩いて乗車して頂いた方が良いかと思われる。
朝8時頃、ドンキホーテ前に納車のトラックが左車線に停まっている、早めの車変更が良い。
●●様宅近くに水色の軽自動車がいつも止まっているが、同じ場所でなく、T字路曲がってすぐの所に止まっていることがあってビックリする。
工事車両や荷降ろしの車両が道を塞いでるケースは困りものですが、お互い様なのでどうしようもないですね。今日限りの突発的なものならその場対応で迂回するしか無いですが、ある程度パターンが見いだせるものであれば、事業所内で情報共有した上で、予め迂回ルートを組むという手もあります。
走行していると前に停車している車があった。追い抜こうとしたらドアが急に開いてびっくりした!
路上駐車のトラックを追い越そうとするとウィンカーを出すこともなく突然走りだした。
駐停車している車を不動の障害物として思い込み過ぎると、突然ドアが開いたり動き出したりして接触事故に繋がることがあります。速度を落として徐行で通り過ぎるか、十分に間隔を開けて交わすのが良いでしょう。
帰りの送迎中、トンネル内で、対向車線のトラックから、石が落ちてきて、タントの天井にぶつかりました。幸い怪我人はいませんでした。
幹線道路を走っている時前にトラックが走っていた。その荷台から部品が落下して対向車のところに飛んでった
朝の送迎時、工事中の塀を壊した瓦礫が車に倒れてきてあたりました。
発生してしまうとどうしようもないインシデントです。避けようと急ハンドルを切るのも危険ですからね。過積載っぽいトラックの後方には付かないようにする、崩れそうな雰囲気の堀や家屋の脇を通るのは避ける、程度でしょうか。
●●様、自宅前の道の真ん中に子猫がいたので、車に轢かれないように脇に退かしました。
●●団地周辺、ネコ多発。気をつけてください。
走行中に鳩が動かず、やや急ブレーキになった。
これも難しいインシデントです。自動車教習所では動物を轢きそうになっても急ブレーキは踏まずにそのまま轢くように習いますが、実際には習った通りやるのはまず無理で、とっさに急ブレーキ踏んでしまうと思います。
●●様を乗車させ、センターへ向かう際、風が強くゴミステーションからゴミ袋が転がってた。ハンドルを右へ切ってしまったが対向車がいなかったので事故に繋がらなかった。
朝の送迎時、道にたくさん木の枝が落ちていて通りにくかった。雨の日の翌日だったのもあると思うが注意点が必要。
朝の送迎時、道路に30センチほどの材木が落ちていました。遠くから異変に気づいため避ける事ができました。
交差点を左折してすぐに、動物の死骸があり、驚いて急ハンドルを切ってよけてしまった。
道路上のゴミや植物などは、視認したら十分に減速した上でウインカーを出して回避運転をするのが原則です。風の強い日や台風後は特に、いつもよりも注意が必要でしょう。
どのようにすれば事故を防げるでしょうか?
- 30km/hの速度制限指定が有る道は特に、速度制限を守りましょう
- 歩行者の近辺を通るときは徐行しましょう
- 夜間走行時は特に、黒系統の服を着た歩行者や子どもや犬を見落とさないよう、常に安全チェックを心がけましょう
- 水たまりをはねて歩行者に水を浴びせないようにしましょう
- 交差点での右左折時は特に歩行者の動向に注意しましょう
- 子どもを見かけたら速度を緩めていつでもブレーキを踏めるようにしましょう
- 工事や通行止めなどの情報を把握しましょう
- 各送迎ドライバーが報告し合って、事業所内で積極的に共有していきましょう
- 送迎ルートを組むときに、危険な道はなるべく避けましょう
- 見通しの悪い状況では、入念な安全確認と低速での注意運転を行いましょう
- 雨の日・雪の日特有の要注意ポイントを把握して、特性に合った注意運転を行いましょう
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